ICT分析:デイトレードの基本とセットアップ
デイトレードの全体像
1日単位の価格変動(デイリーレンジ)を利用して利益を得ることを目指します。短期の売買なので、数時間から1日で決済を完了することを目標に戦略を立てましょう。
- トレードに適している日といない日
相場に方向性(トレンド)がなく、値幅も小さい日はチャンスが少なくなります。無理にトレードしない待つ姿勢も重要です。平均すると1日に2回程度のチャンスがあり、1日の値幅は過去5日間の平均日足レンジ(ADR:Average Daily Range)に近いです。
- バイアスに基づくアイデア
その日の上がりやすいのか・下がりやすいのかというバイアスを見極めてエントリーします。週足(Weekly)の方向と合わせるのが理想です。上位足(週足・日足)のトレンドとプレミアムディスカウントのPD Arrayが一致する方向へデイトレードで便乗します。IPDA(Interbank Price Delivery Algorithm)に基づくHTF時間軸のレンジ認識とPD Arrayがデイトレードのフレームワークとなるので、小さい時間足の騙しには気を付けて、LTFだけを見ることを控えましょう。
- 損切幅の設定
デイトレードは短期のため、ストップロスを狭く設定できます。ただし、狭すぎるとノイズで刈られるので直近の高安値を基準にするのが基本です。
デイトレードセットアップの構成要素
- 上位時間足(HTF)のインスティテューショナル・オーダーフロー
週足や日足などの大きな時間足において、スマートマネーがどちらの方向にポジションを持っているかを見ることです。スマートマネーは単純に高値で買って安値で売るのではなく、リクイディティのある場所でポジションを入れます。その流れは大きな時間足のチャートに表れます。その流れに逆らわないことがデイトレの成功率を高めます。
- IPDAが新たなリクイディティポイントを探しに行く
市場はIPDA(Interbank Price Delivery Algorithm)という仕組みによって、次に狙うべきリクイディティポイントへと動いていくという概念です。このIPDAに従うことで、次に価格が狙うレベルが予測できます(前週高値・前日安値などの目安となるレベル)。
- 現在の週足のローソク足がどちら向きか
今週のローソク足が陽線(上昇)か、陰線(下落)かを見ることで、その週の全体的なバイアス(方向性)を確認します。現在の週足ローソクの方向は、デイトレにとって流れに乗るための地図です。陽線は上方向にバイアスがあるとし、陰線は下方向にバイアスがあると読み取ります。特に水曜から金曜は週足が明確に形成されるため、反転するか継続するかを見極める重要な時期です。
- 曜日と時間帯
トレードにおいて、曜日によるパターン性(シーズナリティ)が存在します。曜日ごとにボラティリティや動き方が異なります。1日の中でも特定の時間帯(Kill Zone)にエントリーチャンスが集中するという性質を活用します。
- ボラティリティの拡大は大きな1日の値幅
市場に勢いが出ている状態(大きなDaily Range)があると、トレードセットアップが生まれやすいです。値動きが大きくなる日はチャンスも増えますが、リスクも増えます。ICTでは、前日と比べたADR(平均日足レンジ)を確認し、急な拡大があるかをチェックします。FOMC・NFPなどのニュース主導でのボラ拡大は構造が崩れる・崩れやすくなるためトレード対象外です。
ICT分析:時間帯に基づく市場の特徴
市場の開始と終了に基づくプロファイル
- ロンドン市場の開始(London Session Open)
欧州トレーダーが本格参入し、リクイディティとボラティリティが急上昇する時間帯です。特にロンドン市場は世界の為替取引の中心の一つで、全体の取引量の約3割以上を占めるため、市場への影響力が非常に大きいことで知られています。
- 時間帯とICT的特徴
ロンドン・キルゾーン(London Kill Zone)に該当します。 トレンドの始動点になることが多いです。前日・アジアレンジの高値or安値を狩る(Stop Hunt)動きが出やすいことも特徴です。日本時間の15時から17時(夏時間)・16時から18時(冬時間)の間、ボラティリティが高くなり、Displacement(勢いのある動き)が発生すれば、その方向へのエントリー根拠になります。
- 時間帯とICT的特徴
- ダマしに注意:ロンドンオープン直後はフェイクの動きがよく出る
- Kill Zoneを待つ姿勢:ストップハント後の方向性が固まってから入るのが安全
- 上位足と組み合わせる:HTFと同じ方向に動きが出たときが最も狙いやすい
- ニューヨーク市場の開始(New Tork Session Open)
アメリカ勢の参入により、1日の中で最も大きなボラティリティが発生しやすい時間帯です。特に米国は世界最大の経済圏であり、主要なニュースや経済指標がこの時間に発表されることが多いため、値動きが極端になりやすいです。
- 時間帯とICT的特徴
NYキルゾーン(New York Kill Zone)に該当します。ロンドン時間でできた構造を壊し、利確による逆張りチャンスもあります。Fair Value GapやBreaker Blockが発生・機能しやすく、相場に生きやすいです。日本時間の21時半から23時半(夏時間)・22時半から0時半(冬時間)の間にボラティリティが最大に達します。ロンドン時間の流れを受けての追撃トレード構造の反転を狙う逆張り戦略が有効なマーケット構造が多いです。
- 時間帯とICT的特徴
- 経済指標リスク:米国の主要指標がこの時間帯に集中・急激な乱高下に注意
- だましに注意:ロンドンの高値・安値を一度突破してから逆方向に動くが多発
- エントリーの優先順位:HTFのバイアスとPD Arrayが一致するとき参入
- ロンドン市場の終了(London Close)
欧州勢がポジションを手仕舞い(決済)する時間帯であり、リクイディティが徐々に減少していく時間です。ロンドン勢が撤退することで、市場の主導権がニューヨーク勢に移るタイミングとも言えます。
- 時間帯とICT的特徴
トレンドの終盤またはフェイクムーブ(False Move)に注意しましょう。ロンドンが買ったものを、NYが売るような構図が見られる場合があります。日本時間の0時から1時(夏時間)・1時から2時(冬時間)の間にボラティリティがやや低下傾向にあり、この時間は利確タイミングとして検討しましょう。
- 時間帯とICT的特徴
- 利確の時間と割り切る視点:ロンドン時間から保有していたポジションの決済
- 相場の主導権が交代するタイミング:ロンドンクローズ後はNY主体
- ボラ低下(チャンス減少):LOCとNYの動きが噛み合わないとだましになる
- ニューヨーク市場の終了(New York Close)
すべての主要市場(ロンドン・ニューヨーク)が終了し、1日の取引が完全に一区切りとなる時間帯です。取引参加者がほぼいなくなり、リクイディティが極端に低下します。
- 時間帯とICT的特徴
翌日への準備時間となります。NYが形成した高値・安値は翌日のPD Arrayに影響するので注意が必要です。日本時間の5時から6時(夏時間)・6時から7時(冬時間)の間、ボラティリティは最低となり、市場は全く動きません。
- 時間帯とICT的特徴
- 新規エントリーは避ける時間帯:エントリーしても期待値は低い
- 翌日の分析準備:NYCの高値・安値が翌日のPD Arrayの起点となる
- ボラ低下(チャンス減少):無駄にチャートを追い続けるリスクを避ける
- アジア市場の開始(Asian Session Open)
東京市場が始まる時間です。世界の中では比較的静かな時間帯で、大きな値動きは少なくレンジ相場になりやすい傾向があります。
- 時間帯とICT的特徴
PD Arrayや前日NYの高値・安値に対して反応を見る時間となります。トレードには最適ではない時間帯です。日本時間の8時から10時の間、ボラティリティが低めであり、PD Array・方向性決定・IPDA記録などの準備に最適な時間となります。セットアップの可能性もありますが、無理にトレードしないことが大切です。
- 時間帯とICT的特徴
- 過度な期待をしない:アジア時間はレンジ相場になりやすい
- 欧州・NYへの準備:ロンドンやNYでのKill Zoneに備える
- セットアップは存在するが慎重に:ときどき動意づけが出る場合もある
- ロンドンのお昼休憩時間(London Lunch)
ロンドン市場が一旦落ち着き、ニューヨーク市場が始まるまでの時間になります。欧州トレーダーの多くが昼休憩を取り、取引参加者が減少するため、市場の勢いが弱まります。
- 時間帯とICT的特徴
ロンドンの利確による一時的な反転(Fake Move)が起きやすいです。この時間に高値・安値を取りに行く動きはフェイクの可能性があります。日本時間の20時から21時(夏時間)・ 21時から22時(冬時間)の間、ボラティリティが中程度から減少していき、新規エントリーは控え、NY時間のセットアップに備えましょう。
- 時間帯とICT的特徴
- ランチタイムの反転に惑わされない:一時的に急な動きは往々にしてフェイク
- トレードは休憩する勇気も大切:NY開始での大きなセットアップを待つ
- 分析の時間に使う:前日のNY高安値、アジアレンジ、ロンドンの動きを確認
曜日別の市場構造とデイトレードのチャンス傾向
- 月曜日の週のオープン価格決定
月曜日は市場が開いて間もなく、リクイディティもボラティリティも極端に低いため、トレードには不適切です。月曜日の市場オープン価格がその週の基準点となります。これは、週内のバイアス(方向性)判断の軸となります。
- ICTの想定する価格判断
価格は動いても方向感なく、騙しが多いです。IPDA構造の形成も始まっていないため、根拠がないことが多いです。トレードせず、週足や先週のPD Array構造の確認に時間を使うことが多い時間帯です。スマートマネーは週単位の高安レンジ設計で価格を動かすことと、その始点がこのMonday Open(週始め価格)となるので、月曜日のオープン価格に水平線を引くと、日のバイアスの向きと価格の方向性を見極める軸となります。
- ICTの想定する価格判断
- 週始め価格は、週内のデイトレードでの方向性判断に役立つ
火曜日はリクイディティが完全に戻っておらず、小さな値幅の中で価格が上下することが多いです。火曜日から金曜日にかけてのトレードで、価格が週始めより上か下かを見ることで、その日のバイアス(上目線・下目線)を決める基準になります。
- ICTの想定する価格判断
ICTの想定する週の基準レンジ(Benchmark Range)として活用します。火曜以降のブレイクを狙う準備日として有効です。方向性を決めるバイアス設定を行い、エントリーは慎重に行いましょう。火曜日は主に構造チェックとIPDAマッピングの軸として機能しますが、マーケットプロファイルも確認しておくと便利です。週足ブリッシュ想定の場合、価格が週始めより上なら買い目線(Buy Bias)、下なら買いを仕掛ける罠(Discount)の可能性があると認識し、週足ベアリッシュ想定の場合はそのの逆となります。
- ICTの想定する価格判断
- 水曜日までの60分足チャートでこの週始め価格を追跡
水曜日は本格的なトレンドが出やすく、デイトレードに向いている日です。月曜日から木曜日の間、1時間足を使って価格が週始め価格とどう関係しているかをチェックします。
- ICTの想定する価格判断
月曜にできたレンジをブレイクする動きが出やすく、ロンドンやNY Kill ZoneでのDisplacement狙いが有効になってきます。方向性が合っていれば積極的にトレード可能です。特にロンドンKill Zoneで最初の流れを取るのが狙い目となります。価格は週始めより上か下かをバイアスとTrap判断として使いましょう。
- ICTの想定する価格判断
- バイアスは、週始め価格より上下に価格が来たら買い・売りを探す
水曜日から木曜日にかけては週足の中間・後半であり、週足の方向性が確定し始める日です。値動きやバイアスが明確でチャンスが多い曜日になります。今週の流れは上方向と判断したら、週始め価格がサポート(下限)になります。その上に価格があるなら、Buy biasは維持されるということです。今週が下方向と判断したら、その逆となります。
- ICTの想定する価格判断
スマートマネーの中間利確または再エントリーが行われやすい曜日になります。IPDAのターゲットが意識されやすく、リクイディティへの走りも見られる曜日なのでボラティリティがどの曜日よりも比較的高いです。週足バイアスに沿ってトレードすることが重要です。NY時間にトレンド継続または反転構造(Breaker BlockやFair Value Gap)を狙いましょう。高値をつけてもMonday Openを超えなければ買い場・売り場として機能しやすいです。
- ICTの想定する価格判断
- 上位足のPDアレイに到達するまでは、この戦略を継続
金曜日はレンジが小さく、週のクローズへ移行します。市場は週の終わりに向けてポジションを整理し、値幅が縮小しやすい傾向にあります。この戦略は価格がHTF(週足・日足)のPD Array(PremiumまたはDiscount)に到達するまで続けます。
- ICTの想定する価格判断
フェイクムーブに注意しましょう。NY午後は特に動きが鈍化し、仕掛けが少ないです。朝の最初の動き(ロンドンKillzone)でトレードを完結させるのが理想です。ロンドンKillzoneでのエントリー後はNY以降の利確・撤退をメインに計画的にアウトし、HTFのPD Arrayの到達は、構造の再設計ポイントとなるので、それが次のフレームに価格構造が切り替える合図になります。それまでは、週始め価格を使った戦略を継続することをお勧めします。
- ICTの想定する価格判断
曜日別の市場構造とデイトレードのチャンス傾向
- 普通のトレーダーが考える24時間市場とインターバンクの24時間市場は違う
FXブローカーやリーテイラーは、1日の始まりと終わりを日本時間0時やブローカー時間で見がちです。しかし、ICTではインターバンクの価格設計(IPDA)に合わせて、市場の1日を再定義します。市場はニューヨーク時間(EST)基準で設計されます。リーテイラーのカレンダー感覚ではなく、インターバンク視点で時間を区切ることが重要です。
- アジアレンジ(The Asian Range)
日本時間の10時から14時までのアジア時間の静かな時間帯で、日中の最初のレンジ(基準値幅)を形成する時間です。このレンジはロンドンやNYで狩られるリクイディティプールになりやすいです。ICTではアジアレンジの高値・安値を必ずマークします。
- ロンドン・キルゾーン(London Killzone)
日本時間の15時から19時までのロンドン市場が始動し、強いトレンドが出る時間帯です。この間にロンドン勢がアジアレンジをブレイクしてストップハントを仕掛けるケースが多い時間帯となっています。ロンドンKillzoneは1日で最初の大きなチャンスゾーンとなっています。Fair Value Gap(FVG)やBreaker Blockがよく機能する時間帯です。
- ニューヨーク・キルゾーン(Now York Killzone)
日本時間の21時から24時までのニューヨーク市場のオープンと同時に最も激しいボラティリティが発生する時間帯です。特にロンドンで形成した構造が壊れるか、継続するかを決定する時間帯でもあります。ロンドン時間で作られたレンジをNY勢が狩りに行く動きが多くみられます。ここが1日の最大チャンスゾーンです。
- ロンドン・クローズ・キルゾーン(London Close Killzone)
日本時間の0時から2時までのロンドン勢がポジションを手仕舞いし始める時間帯です。逆張り方向に一時的に動くフェイクムーブが発生しやすいです。トレンド転換のきっかけになることもありますが、基本的には新規エントリーより利確推奨とされています。
HTFとデイトレードの統合
高次時間足(HTF)とデイトレードエントリーの関係
- デイトレードとHTFの統合
多くのトレーダーは、短期トレード(5分足や15分足)と長期トレード(日足や4時間足)を切り離して考えがちです。しかし、実際には HTFが示す方向性や重要レベルを背景にして、短期足でエントリーの精度を高めることができます。つまり、短期足はHTFに仕込むための顕微鏡として活用します。
- ロンドン・キルゾーンの柔軟な使い方
ICTではロンドンキルゾーン(ロンドン市場の序盤)を重視します。ただし、必ずしもロンドン時間である必要はありません。自分の生活スタイルに合わせて、ニューヨーク時間(NYオープン前後)やアジア時間(東京市場やシドニー市場)のリセット時間でもチャンスを狙えます。大事なのはどの時間帯に大口が仕込みや決済を行うかであって、自分が観察できる時間帯で良いということです。
- IPDAが注目するリセット
IPDAがいうリセットとは、日足が切り替わる時間(NY時間で午後5時前後)・ロンドンオープン前後(NY時間1時頃)・NYオープン前後(NY時間8時頃)などを指します。この時間帯は大口(スマートマネー)がポジションを整理・再構築するため、急な値動きやフェイク(騙し)が発生しやすいです。トレーダーはまずリセット後の方向性を意識することが重要です。
- 日足の重要性
デイトレードでも日足はその日の基盤になるので必ずチェックしましょう。ICTでは、これらを基準にして今日の売買エリアを大まかに絞り込みます。
- HTF(日足・4時間足)を必ず見て、短期足はその補助として使う
- ロンドン・キルゾーンは有効だが、必須ではない。自分が取れる時間帯を活用
- IPDAのリセット時間(ロンドン前後・NY前後・日足切替)で特に注意
- 日足の4本値(始値・高値・安値・終値)は必ず意識
まとめ
