ICTから学ぶ市場相関分析

ICT分析:市場相関分析(インターマーケット分析)

市場相関分析の概要と4つの主な市場関係

  • 市場相関分析(Intermarket Analysis)の概要
    市場相関分析(インターマーケット分析)とは、株式・債券・為替・商品(コモディティー)といった複数の金融市場の相関関係を分析し、市場全体の方向性を推測する手法です。金融市場はそれぞれ独立しているように見えても、実際は連鎖反応のように影響を及ぼし合います。したがって、ある市場だけを見て取引判断を下すのではなく、必ず他の主要市場との関係も確認する必要があります。

4つの主要な市場関係

  • 債券市場と金利
    • 基本的な考え方
      債券価格と金利は逆相関します。債券価格が下がると利回り(長期金利)は上昇し、逆に債券価格が上がると利回りは低下します。

    • ICT的視点
      米国10年債利回りはリスクオンやリスクオフを測る重要な指標です。リクイディティの逃避先として債券が買われるか売られるかが、市場心理を読み解くカギになります。
  • 金利上昇:株式市場にマイナス・為替(ドル高要因)にプラス
  • 金利低下:株式市場にプラス・ドル安要因
  • 先物商品(コモディティー市場)
    • 基本的な考え方
      コモディティー価格は、インフレや景気循環と密接に関係します。

    • ICT的視点
      コモディティー価格はインフレ期待を映すため、中央銀行の金融政策の先読み材料になります。特に金とドルの逆相関は重要となることが多いです。
  • 原油高:インフレ懸念、金利上昇、株式にマイナス
  • 金価格上昇:リスク回避のシグナル(安全資産として買われる)
  • 株式市場
    • 基本的な考え方
      株価は景気の先行指標とされ、投資家心理やリスク選好を強く反映します。

    • ICT的視点
      S&P500やNASDAQは市場全体の資金フローを示す代表的なベンチマークです。IPDAの分析では、株式の動きが為替・債券・コモディティーにどう波及するかを観察できます。
  • 株高:リスク選好(リスクオン)= 為替市場では新興国通貨や円安傾向
  • 株安:リスク回避(リスクオフ)= ドル高・円高が進みやすい
  • 為替市場
    • 基本的な考え方
      通貨は国の金利水準・景気・資本フローに影響され、株式・債券・コモディティーすべての動きを最終的に集約する市場となります。

    • ICT的視点
      為替市場はリクイディティの最終受け皿となります。株式・債券・コモディティーの動きが複合的に現れるため、IPDAでは常にクロスマーケットの力学を踏まえてエントリー・アウトを判断します。
  • 金利上昇:通貨高(特にドル)
  • 株安・リスク回避:円高・ドル高になりやすい
  • 債券市場と金利:金利サイクルを読む
  • 商品市場:インフレや景気動向を読む
  • 株式市場:投資家心理と資金フローを読む
  • 為替市場:上記すべてを集約する鏡

市場相関分析におけるカギとなる関係

  • 為替市場 vs 先物市場(コモディティー市場)
    • 基本的な関係
      強い通貨は輸出に不利に働くため、農産物や資源価格(コモディティー先物)に下押し圧力をかけます。逆に、通貨が弱いと輸出が有利になり、商品価格が上がりやすくなります。

    • 相関性
      一般に逆相関関係が見られます。

    • 補足
      米ドルと原油・金の逆相関は代表的です。ドル高は金や原油が割高になり下落しやすいです。ただし、需給要因や地政学リスクで通貨との連動が崩れることもあるため、絶対的ではないです。

代表的な指数:CBR Index

  • 債券市場 vs 先物市場(コモディティー市場)
    • 基本的な関係
      債券利回り(長期金利)が上昇すると、インフレ抑制や景気減速懸念が意識され、商品(コモディティー)価格は下落しやすくなります。逆に利回り低下はコモディティー価格を押し上げやすいです。

    • 相関性
      一般に逆相関関係が観察されます。

    • 補足
      金はインフレヘッジとして債券とは特に強い逆相関が見られます。

代表的な指数:Goldman Sachs Commodity Index・Industrial Materials Index

  • 債券市場 vs 株式市場
    • 基本的な関係
      一般に、金利低下(債券価格上昇)には株式市場にプラスという関係が多く見られます。理由は、低金利は企業の借入コストを下げ、株式バリュエーションを高める効果があるためです。

    • 相関性
      短期的には逆相関、長期的には景気サイクルによって順相関の場合もあります。

    • 補足
      一般的には逆相関のケースが多いです。ただし、景気後退時には債券も株も同時に売られるケース(逆金融相関)が起きるため、必ずしも一方向ではないです。基本は逆相関ですが、状況により変化します。
  • 為替とコモディティー:通貨高は輸出不利 = 商品安
  • 債券とコモディティー:金利上昇は需要減退・インフレ抑制 = 商品安
  • 債券と株式:金利低下は株にプラス・金利上昇は株にマイナス

市場におけるリーダー(先行)とラガー(遅行)の関係

  • 債券市場(リーダー)vs 株式市場(ラガー)
    債券利回りの変化はしばしば株式市場に先行します。債券が先にシグナルを出し、株式が後から反応する傾向が強いです。
  • 金利上昇:将来の借入コスト増加を見込んで、後から株価が下落
  • 金利低下:資金調達が有利となり、遅れて株式市場が上昇
  • 債券市場(リーダー)vs コモディティー市場(ラガー)
    債券利回りはインフレ期待を最も早く織り込みます。米国10年債利回りが急騰した後、数週間遅れて商品価格が反応することが多いです。
  • 利回り上昇:金や原油が遅れて下落
  • 為替市場(リーダー) vs コモディティー市場(ラガー)
    為替はグローバル資本フローを直接反映するため、商品市場に先行することが多いです。短期的には、商品価格が急変すると為替が後追いする場合もあります。
  • ドル高が進行:数日から数週間後に金・原油などのコモディティーが下落
  • 株式市場 vs 為替市場
    • 短期的には株式がリーダー
      リスクオン(株高)なら円安、リスクオフ(株安)なら円高へ。

    • 長期的には為替がリーダー
      持続的なドル高やドル安が、後から企業収益や株価に影響。

市場相関分析のカギとなる相関関係(IPDA視点)

順相関がある市場(同じ方向に動きやすい)

  • ゴールド(リーダー) vs オーストラリアドル・ニュージーランドドル(ラガー)
    オーストラリア(AUD)とニュージーランド(NZD)は資源国であり、特にオーストラリアは金の輸出国です。ゴールド価格が上がると、AUD・NZDが買われやすく、NZDは乳製品価格の影響も受けるため、AUDほど強い相関ではないです。
  • 日経インデックス(リーダー) vs USDJPY(ラガー)
    日本株が上昇すると、スマートマネーは円を売りドルを買うため、円安(USDJPY上昇)になりやすいです。これはリスクオンの典型であり、リスクオフ時は株安・円高になります。短期的に為替がラガーになる場合が多いです。
  • 債券利回り(リーダー) vs 為替市場(ラガー)
    高金利通貨には至近が流入しやすく、米債券利回りが上がればドル高になりやすいです。特に米10年債利回りとドルインデックスが強く連動します。

逆相関がある市場(逆方向に動きやすい)

  • 米ドルインデックス(リーダー) vs ゴールド(ラガー)
    ゴールドはドルの代替え資産です。基本的に逆相関があります。ただしインフレや地政学リスク時には同時方向に動くこともあります。
  • 原油WTI(リーダー) vs USDCAD(ラガー)
    カナダは産油国です。原油高によるCADの需要によりUSDCADが下落するような、逆相関があり、USDCADペアは石油通貨ペアとも称されます。
  • ゴールド(リーダー) vs USDCAD(ラガー)
    ゴールド価格上昇は、資源国通貨CADを押し上げ、結果的にUSDCADペアは下落します。ゴールドとCADは商品サイクルによって強弱が変わります。

まとめ