ICT分析:トレンドライン理論
トレンドラインの一般的な働き
トレンドラインとは、上昇トレンドでは安値同士を結び、下降トレンドでは高値同士を結んで引く線のことです。これは、価格がどの方向に動いているのかを視覚的に確認するための最も基本的な作業になります。特に前回の高値や安値と重なるポイントや他のテクニカル要素(サポート・レジスタンス・オーダーブロック・フィボナッチ水準など)が重なる場所 にトレンドラインが位置すると、そこはトレーダーが意識するエリア・オブ・ハイコンフルエンス(AOH) と呼ばれます。
Area of High Confluence(AOH)とは
High Confluence とは複数の根拠が集中している場所という意味になります。
一般トレーダーは、ここでサポートやレジスタンスが強いと判断するため、エントリーや決済の目安となります。
このため、AOHは多くの注文(売り・買い)が集まる場所 となり、価格が大きく動く起点になることがあります。ICTの視点では、こうしたエリアはしばしばリクイディティが集中する領域 でもあり、スマートマネーが仕掛けを行うきっかけになることが多いです。
トレンドラインの注意点
トレンドラインは万能ではない 初心者はトレンドラインを万能だと思いがちですが、単独では信頼性が低いです。必ずオーダーブロック、リクイディティプール、フェアバリュー・ギャップなど、ICTの他の概念と組み合わせて考える必要があります。
AOHはチャンスであり罠でもある スマートマネーは一般トレーダーがAOHを狙っていることを知っているため、意図的にブレイクを演出してストップを狩ってから本来の方向へ動くことがあります。初心者は最初の動きに飛びつかないことを推奨します。
方向性を持った動きの起点になりやすい AOHは単なる価格が止まる場所ではなく、リクイディティが集まるために動き出しやすい場所と理解することが重要です。
ICT分析:スマートマネーとトレンドライン
トレンドラインの視覚バイアス
ICT(Inner Circle Trader)の考え方では、トレンドラインは本質的な支持線や抵抗線ではなく、ただの見える線 にすぎません。多くの個人投資家は線を割ったら下がる・反発すると考えて売買します。その結果、トレンドライン付近には大量の注文(逆張り・損切り・ブレイクアウト注文)が集中 します。これこそが視覚バイアス(Visual Bias) です。多くの人が見ているからこそ、その場所に注文が集まりやすいという心理的効果です。
スマートマネーの視点
個人投資家が引いたトレンドサポートライン(下値支持線) やトレンドレジスタンスライン(上値抵抗線) の周辺に、損切り注文や新規注文が溜まります。
スマートマネーはその上下のリクイディティを狩り取るように市場を動か します。
価格をトレンドラインの上下に一時的に抜けさせることで、損切りや逆張り注文を吸収し、決済や新規ポジション形成に利用します。
初心者への注意点
トレンドラインは効くように見えるだけ 実際には多くの人が意識するから効いているように見えるのであって、価格の自然法則ではなく、ただのリーテイラーの心理効果です。
ブレイクの後の動きが本質 ラインを割った瞬間の動きよりも、その後にどう価格が展開するか(リクイディティを吸収した後に戻すのか・さらに走るのか)が重要になります。
視覚バイアスに騙されない 線があるから効くと思い込むのは危険であり、むしろその裏をかく大口の動きを読むことがIPDAの目的です。
トレンドラインは心理的効果の一環
トレンドラインの利用
トレンドラインの利用とその本質 マーケットが大きく動き(Expansion=価格の拡張局面)を繰り返していくと、チャート上に上昇トレンドや下降トレンドが形作られていきます。これが多くの個人投資家にサポートラインやレジスタンスラインとして認識されます。
多くの初心者トレーダーは
サポートラインで買えば反発する
レジスタンスラインで売れば反落する
と信じて売買します。その結果、これらのライン付近には逆張り注文や損切り注文が集中し、リクイディティエンジンが作られる のです。このように注文が一箇所に固まると、スマートマネーはそれを利用してリクイディティ・ハント を行います。
チャートに見えるものと実際の流れ
トレンドラインが支えているように見える局面 個人投資家が反発するだろうと売買を入れることで、その上下には損切り注文が溜まっていきます。
トレンドラインが崩れる瞬間 サポートやレジスタンスを抜けた途端、多くのリーテイラーが売買し始めます。
結果として残るのは大口のポジション スマートマネーはそのリクイディティを利用してポジションを構築し、リーテイラーは損切りで市場から退場させられます。
トレンドラインが注文を集め、リクイディティエンジンになる
スマートマネーとトレンドライン
価格はリクイディティを基準に動く 価格そのものはリクイディティを探しに動いています。つまりどこに多くの注文が溜まっているかを常に見に行きます。トレンドラインそのものを尊重しているのではなく、トレンドラインの周囲に集まる注文を狙っているのです。
トレンドを予言しないこと スマートマネーはこのラインで反発するだろうというトレンド理論で未来を予言しているわけではありません。彼らが注目しているのは、まだ取引されていない価格帯(Untraded Price・未充足の価格領域)や、注文が集中している場所 です。
トレンドラインで直接取引しない トレンドラインは市場参加者が意識する線に過ぎません。 スマートマネーにとっての本質は 流れ(フロー)であり、トレンドラインそのものではなく、その周囲に発生するリクイディティ(ストップ注文の集合)を利用してポジションを作ります。
価格はリクイディティだけを尊重 し、大きな流動性がどこにあるかを見ている
トレンド理論で価格を予言せず、取引されていない価格に目を向けている
トレンドラインの本質は流れであり、トレンドラインで取引しない
まとめ